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イベント報告
 ソフトウェアテストシンポジウム 2011 新潟

2011年2月18日(金) 於 NICO会議室

ソフトウェアテストシンポジウム 2011 新潟

2011年になって、新たにJaSSTが新潟で開催されることとなった。当初予定していた定員は満席となり、その後も問い合わせが寄せられたために急遽増席したという。それでも満席となるほどの盛況ぶりだった。 それだけ新潟での開催が期待されていたのだと思う。
「品質を上げるための、個人/組織の体質改善」というコンセプトに沿った基調講演、事例発表、会場全体でのパネルディスカッションが行われた。セッション間のつながりがとてもよく、 相互作用で聴講者が講演内容について一層理解しやすくなっていたと思う。

基調講演は西康晴氏の「テストを軸にしたソフトウェア品質の改善」。品質とコストと納期はトレードオフだという考えは誤解である。品質を上げて手戻りを減らすことで、コストを抑え、納期を短縮することができる。 それを組織が実現するにあたりヒントとなる情報を教えていただけた。
自組織のカイゼンだけでなくパートナーやお客様を巻きこんでカイゼンしていく「高カイゼン戦略」の紹介と高カイゼン戦略を支える「フォロワーシップ」を教育する必要性、他工程配慮の重要さ、 Wモデルの解説およびWモデル導入により開発者が「もっともよいやり方で考える」ことに近づけていくプロセスを目指すべきであること、などといった、非常に盛りだくさんの内容で、多くのことを学べた。

遠藤良夫氏の事例発表「組織としての開発力および品質力向上への取り組み」は、西氏の基調講演を踏まえて聴講することでより理解が深まる内容となっていた。組織としてプロセス改善や監査をどのように進めてきたか、 それによりどんな効果や課題が出たか、プロジェクトにWモデルを導入する際の工夫、開発・評価の連携の重要性、そしてこの活動を継続発展させるための教育について語られた。
酒井賢氏の事例発表「「おめさん、なじらね?」- 派生開発でUSDMとDRBFMをミックスして一気通貫で品質確保する -」では、派生開発において要求を仕様化する技術の習得、変更点の抜け漏れ防止や変更点を追跡する必要性、 問題発生の未然防止といった課題に対し、USDMとDRBFMを取り入れてみたうえで、自分たちの現場になじむための工夫を凝らしたという、興味深い事例が紹介された。
どちらの事例発表も、まずはパイロットプロジェクトで試してみること、自組織に合うようにオリジナルな工夫を考えること、プロジェクト全体でコミュニケーションをとりあい、他工程や他組織に思いやりを持ち連携すること、 それがよりよい改善につながるということがはっきりと見えた内容だった。

パネルディスカッションではJaSST'11 Tokyoと同様に会場の参加者を巻きこんだものであった。最初のうちは参加者に緊張感が残り、率先して発言が寄せられる雰囲気にならなかったが、 議論を進めていくうちに参加者からも質問や相談が寄せられるようになった。新潟で今後勉強会を開催する動きが出ていることもあり、エンジニアの皆様が社外活動にもっと慣れることで、 来年は更に会場全体で議論が盛り上がるようになるのではないかと思う。

実行委員長はJaSSTでは初の女性であり、その活躍ぶりは女性のテスト技術者に勇気と良い刺激を与えたと思う。クロージングの挨拶も女性らしい表現ながら力強い意志が伝わるものだった。 「今はやっと種ができたところ。この種を育てて綺麗な花を咲かせたい。そのために皆さんの力が必要です!ぜひ一緒に咲かせましょう!」。見事な花が咲くまでにはそう時間はかからないであろう。 工夫上手であり思いやりを大事にする新潟の皆さんと交流して、そう感じた。

(記:坂 静香)

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