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【西康晴氏逝去のお知らせ】

写真/西康晴氏

2023年10月18日、ASTER設立時より17年の長きにわたり理事長を務めた西康晴氏が、急逝されました。
西氏は、JaSST東京共同実行委員長、地域JaSSTのアドバイザ、JSTQB運営委員長、テスト設計コンテスト審査委員長も務められ、日本のソフトウェアテスト技術の振興にご尽力されました。

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2023年10月18日夜に、にしさんが永眠されました。にしさんは、電気通信大学にてソフトウェアテストの研究・教育に励まれると共に、私たちNPO法人ソフトウェアテスト技術振興協会(ASTER)の理事長を設立時から務めるなど、日本のソフトウェアテストの技術振興、人材育成、および、コミュニティ活性化を長く牽引してこられました。

にしさんが電気通信大学に着任した際、「西先生」と私がメールに書いたところ、「「先生」と呼ばれることを、あまり好ましく思っていないので、「にしさん」と呼んでください」と言われて、以来ずっと、私は「にしさん」と呼んできました。
あれから20年近く経ちましたが、そのスタンスは、年上年下にかかわらず誰に対してもずっと変わりませんでした。
本当に、誰に対しても気さくな人柄でした。

JaSST東京を始めたり、ASTERを設立したり、JSTQBを運営したり、テスト設計コンテストを企画立案したり等々、日本のソフトウェアテスト技術の振興や普及に、ここにすべて書ききれないほどの多大な貢献をされました。
また、どのコミュニティでも議論の中心にいて、引っ張っていく人でした。
特に、ソフトウェアの品質や、ものづくりに対して、先見性や将来あるべき姿を描くこと、そこに至る道筋を示すことが得意な人で、私たちは、いつも一歩先を行くにしさんの発想や思考に驚かされることが何度もありました。

私のにしさんとの思い出はたくさんありますが、印象深いのは、JaSST九州で60分(質疑込み)の講演を依頼したにもかかわらず、90分以上講演されたことです。
シンポジウムを運営する実行委員としては、その講演中は、一体いつ終わるのかと冷や冷やしたものですが、シンポジウム終了後の参加者アンケートでは、にしさんの講演に対する苦情など1つも無く、むしろ、貴重な話が聞けた、明日から頑張ろうと思った、という好意的な記述ばかりで、にしさんの講演の1番の優先事項は、参加者に色々な気付きを与えることなんだな、と改めて思いました。
また、20年以上前に、「同値クラス」はどうして「同値集合」と呼ばないのか?という話だけで、3時間近く居酒屋で議論したことや、組込みシステムのハードウェアとソフトウェアのテストの考え方について、半日近く議論したこと等、懐かしく思い出されます。
もう、にしさんの講演を聞くことはできないし、一緒に議論することもできないんだ、と思うと、本当に残念でなりません。

にしさんのご尽力で、日本のソフトウェアテストの技術やコミュニティは活発になりました。
これからも、いろいろと実現したいことがあったと思います。
その道半ばで倒れられたのは、本当に口惜しい限りです。
私たちよりいつも一歩先を行っていたにしさんが、まさかこんな形で、一歩先に行ってしまうとは思ってもいませんでしたが、ソフトウェアテスト振興のために日々忙しく過ごしてきたにしさんが、天国で少しでも休めるよう、私たちは、その志を継いで、頑張っていきたいと思っています。
どうか、私たちを、その暖かい笑顔でこれからも見守っていて下さい。

にしさん、本当にありがとうございました。
どうぞ安らかにお休み下さい。

2023年 10月
NPO法人ソフトウェアテスト技術振興協会(ASTER)副理事長
片山 徹郎

このたびの西審査委員長のご逝去を悼み、謹んでお悔やみ申し上げます。

西審査委員長(以降はふだんどおり、にしさんと呼ばせてください)は、いまから10年以上前の2011年にテスト設計コンテストの立ち上げに尽力された一人です。ソフトウェア設計と同じようにテストにも設計というプロセスがあるということを国内のソフトウェアエンジニアたちに普及したこと、テスト設計コンテストにおける審査やチュートリアルの講師を通して数々のテストエンジニアを育成されたこと、海外のコンテストとの連携など国際交流のチャネルを築いたこと、挙げればきりがありませんが、私たちに新たな道を数多く切り開き、リードしてくださいました。

コンテストでのにしさんは、時にはユーモアを交えたたとえ話で、時には厳しい論調で、私たちにテスト設計技術を語ってくださいました。にしさんがテスト設計チュートリアルをするといつも前半のテスト要求分析だけで時間を使い切ってしまい、運営している実行委員はヒヤヒヤしていましたが、その一方で、にしさんがテスト設計という技術のことをいつも考えていて、時間の制約さえなければ一晩でも二晩でも語ってしまうのだろうなという愛のようなものを感じました。天国にもVSTePのネタが落ちていると良いですね。

もともとコンテストの出場メンバー側だった人たちの一部は、いま審査委員や実行委員として活動しています。それはにしさんが思い描いていた、テスト設計技術が当たり前のように使われている世界を目指すことに賛同して、この活動を盛り上げたいという思いから来ています。これからもそのような世界を目指して審査委員・実行委員一同、頑張ってまいります。
にしさん、これまで本当にありがとうございました。どうかゆっくり休んでください。

2023年 10月
テスト設計コンテスト審査委員・実行委員一同

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