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2026年7月24日(金) 開催
JaSST'26 Hokkaidoのテーマ「Who Tests AI? ~試される大地、試すのは我々だ~」について説明された。AIを誰がどのように評価するのかという問いを軸に、AIをテストする「QA4AI」と、AIを活用する「AI4QA」の両面から、これからのQAのあり方を考えることが本シンポジウムのテーマであると紹介された。
「試される大地」という言葉は、困難に耐えるという意味ではなく、「自らに問いかける」「tryする」という前向きな意味を持つことを知り、テーマとの親和性を強く感じた。AIに試されるのではなく、QAに携わる私たち自身がAIを試し、未来の品質保証のあり方を模索していく姿勢が重要であると感じた。
本セッションでは、JaSST Hokkaidoを支えるスポンサー各社の紹介動画が上映された。
スポンサー各社の紹介を通じて、それぞれの取り組みや事業内容を知ることができた。JaSSTが多様な企業・団体の支援によって運営されていることを実感したセッションであった。
本講演「AI時代におけるテストの基礎の再定義」では、AIの台頭によって変わるのは「実現手段」であり、「ユーザーを満足させたい」という最終的な目的は変わらないことが強調された。
まず、AIはあくまで「道具」であるという考え方が示された。AIという道具を何に対してどのように適用するかを設計するのは人間の役割であり、その動作や結果に対する責任も、利用を判断した人間が負うべきであると説明された。また、「原始時代に突然ライターが現れた料理人」の例えを通じて、単なる「火起こし(作業・手段)」に執着するのではなく、目的を見据えた「料理人(本質的な価値)」へ自身の役割を再定義することの重要性が示された。
これに伴い、QA・テストに関わる職種の役割も次のように再定義された。
さらに、AI時代に求められる「新たなテストの基礎」として、次の4点が挙げられた。
最後に、我々の仕事の本質は「ユーザー満足を実現する仕組みを作ること」であり、AIという強力な道具を活用しながら、より広い品質の世界へ挑戦していくことが期待されると締めくくられた。
今回の基調講演で最も印象に残ったのは、「我々が実現したいことは何か」という問いである。
私は普段、この問いを意識して仕事をしているつもりであった。しかし、忙しくなると、お客様に満足していただくことよりも、自分や社内の都合を優先し、目の前のテスト分析やテスト実行といった作業を終わらせること自体が目的になってしまうことがある。本来の目的は、お客様へ価値を届け、事業を継続できるよう品質を作り込むことである。忙しい時ほど、この視点に立ち返ることの重要性を改めて認識した。
また、この講演は、自身のキャリアについて考え直す契機にもなった。私はこれまで、AIによってテスト設計やテスト実行が効率化されれば、自分の価値も徐々に小さくなるのではないかと考えていた。しかし講演では、QAエンジニアは品質保証の仕組みづくりやプロセス改善、教育など、より広い領域へ役割を広げられることが示された。QAとして培った経験を活かせる場は、まだ数多く残されているのだと感じた。
特に印象に残ったのは、「突然ライターが現れた原始時代の料理人」の例えである。私にとっての「火起こし」は、テスト設計書やテストケース、テストレポートといった成果物を作成することである。一方で「料理人」とは、お客様が満足するソフトウェアを届けるために、品質を設計し、継続的に改善できる仕組みを構築することであると考えた。これまで私は成果物を完成させることに意識が向きすぎ、その先にある価値まで十分に考えられていなかったように思う。
AIとの向き合い方についても学びがあった。AIは強力な道具であるが、成果物が目的を満たしているかを判断し、その結果に責任を負うのは人である。だからこそ、AIに作業を任せるだけではなく、人は考え、判断する役割を担い続けなければならないと感じた。
今後は、AIを活用して作業時間を短縮し、その分、品質や顧客価値について考える時間を増やしていきたい。まずは講演で紹介されていた「今の仕事を整える」ことから始め、AIを活用したトレーサビリティの確立やAPIテストにも挑戦し、少しずつ活動領域を広げていきたいと考える。
今回の講演を通して最も強く心に残ったのは、「手段が変わるだけで、目的は変わらない」ということである。強力な道具が登場するたびに仕事の進め方は変化する。しかし、お客様に満足していただきたいという目的は変わらない。この講演を聞いた後、紹介されていた書籍をその日のうちに注文し、札幌観光の合間に読み始めた。それほどまでに、人の背中を後押しする力を持つ基調講演であった。
本ワークショップは、「テスト技法×生成AI」をテーマに、AIと人が協力してソフトウェアの不具合を見つける実践型イベントである。参加者はECサイトを題材として、テストプロセスにおける「AIが得意な領域」と「人が得意な領域」の最適な役割分担について学んだ。
前半のワークでは、生成AIを用いてテスト観点を洗い出し、テストプロセス全体におけるAIの役割について仮説を立てた。後半のワークでは、Playwright
MCPを活用した自動テストエージェントなどのツールを用い、実際に不具合を検出しながら、その仮説を検証した。AIの進化を体感するとともに、最終的な判断や活用方法を考えることは人間の役割であることを再認識し、現場で活用できる知見を得ることを目的としたワークショップであった。
今回のワークショップでは、生成AIを活用したテスト設計とテスト実行を体験し、AIと人それぞれが得意とする領域について仮説を立て、その後の実践を通して検証した。AIと人の役割分担を実際に体験しながら考えられたことが、大きな学びとなった。
参加前は、生成AIはテスト分析やテスト設計、テスト実装など、機能要件に関するテストには有効である一方、非機能要件のテストはあまり得意ではないと考えていた。しかし実際には、アクセシビリティに関するコントラスト比の問題や、パスワードが平文で送信されるセキュリティ上の問題を指摘しており、想像以上に幅広い観点からテストできることが印象に残った。
一方で、AIに任せる範囲を明確にしなければ、想定以上に広い範囲を長時間テストし続ける場面も見られた。限られた時間で効果的にテストを実施するためには、テストの目的やスコープ、優先順位を人が明確に定める必要があると感じた。AIは作業を高速に実行できる一方で、「何を確認するのか」を決定することは人の役割であることを実感した。
また、グループでローカライズについて議論した際、「ユーザーはどの程度の品質を求めるのか」「企業はどの品質レベルでリリースしたいのか」という話題が挙がった。この議論を通じて、品質基準は企業戦略と密接に関係しており、単純に品質が高ければよいわけではないことを改めて認識した。さらに、その品質基準をAIにコンテキストとして与えることで、AIがその基準に沿ってテスト活動を支援できる可能性もあるのではないかと考えた。
今回のワークショップを通して、人は単にテストを実施するだけではなく、品質基準や優先順位を定め、関係者との合意形成を行う役割を担うことを改めて認識した。また、「基本は一人で作業を抱える」という従来の考え方から、「AIへ作業を委譲し、人は意思決定に集中する」という新たな働き方の可能性にも気付くことができた。この学びを今後の業務にも活かしていきたい。
さくらインターネットの新発田大地氏による講演である。石狩データセンターでの保守・運用や震災対応の現場経験を経て、現在はスタートアップとの共創や地域プロジェクトに携わっている。組織の枠を越えて「個人」として認識されることの重要性や、自分軸を確立したことで生まれた変化について語られた。
講演の核心は、「現場の経験は現場の外で新たな価値を持つ」という考え方である。自身の専門性を再定義し、活動領域を広げるための一つの実践例が紹介された。
今回の招待講演で最も印象に残ったのは、「現場の経験は現場の外で新たな価値を持つ」という考え方である。登壇者は、データセンターで培った運用やプロジェクト推進の経験を活かし、現在はスタートアップや地域との共創を推進する立場で新たな価値を生み出している。同じ経験でも、活躍する場所が変われば新しい価値を創出できるという考え方は、私にとって大きな学びであった。
私はQAエンジニアとして、バグのトリアージやテストの優先順位付け、関係者との期待値調整、限られたリソースの中でどこまで実施するかを判断する業務に携わっている。これまではQA特有の業務だと考えていたが、講演を通じて、これらはQAに限らずさまざまな仕事に応用できる能力ではないかと気付いた。時間や人員、予算に制約がある中で、何を優先し、どこまで取り組むかを関係者と合意形成する力は、現場を越えて発揮できる強みであると感じた。
また、共創についての考え方も印象に残った。講演では、営業活動との違いとして、相手に何かを売ることではなく、縁や問題意識、共感を起点に、お互いの強みを持ち寄って新たな価値を生み出すことが共創であると説明された。そのためには、自分たちが提供したいものではなく、相手が何を求めているのかを理解することが重要であり、登壇者が地域へ足を運び、人と会い、対話を続けてきた理由もそこにあるのだと理解した。
その中でも特に印象に残ったのは、「個人として認識されるようにならないと、相談されない」という言葉である。私自身も日々の業務に追われ、人との関係づくりまで十分に手が回っていない。しかし、共創は人との信頼関係の上に成り立つものであり、まずは相談される存在になることが、その第一歩であると感じた。
今回の講演を通して、現場で培った経験は新たな分野でも価値を生み出せること、そして、その価値は相手との対話や共創によってさらに広がっていくことを学んだ。私も成果物そのものではなく、相手にどのような価値を提供したいのかを意識し、自分の経験を仕事の枠を越えて活かせるよう行動していきたい。
参加者の属性や現場の課題に関するアンケート結果が共有された。参加者の70%以上がテスト技術者または品質保証に携わる立場であり、関わっているドメインや経験年数は多岐にわたっていた。
現場の課題としては、「テスト設計の効率化」「テストケースの網羅性の担保」「テストシナリオの品質向上」が挙げられた。また、参加者が持ち寄った問いをもとに、AIの具体的な活用方法や活用時の考え方・判断軸、AIを活用した洗い出しや網羅性の担保など、4つのテーマが共有された。
最後に、次回のJaSST Hokkaidoは7月から9月頃の開催を予定していることが案内された。
アンケート結果の共有を通して、自分と同じような課題や問いを抱える参加者が多いことを知り、親近感を覚えた。同時に、自身が抱えている悩みは多くの現場に共通する課題であり、AIの活用や品質保証のあり方について試行錯誤しているのは自分だけではないことを実感した。
次回は来年の夏頃に開催予定とのことである。今回得た学びを日々の業務で実践し、その成果や新たな課題を持って再び参加したい。
今回のJaSST'26 Hokkaidoへの参加を通して、AI時代における働く人の役割について改めて考える機会となった。
これまで私は、AIによって作業が効率化されることで、人の価値も次第に小さくなっていくのではないかと考えていた。しかし、基調講演やワークショップを通して重要なのは、作業そのものではなく、「何を実現したいのか」「どのような品質を目指すのか」を考え、判断することであると気付いた。AIは強力な道具であるが、目的や品質基準を定め、その結果に責任を持つのは人である。AI時代だからこそ、人には価値を見極め、意思決定する役割がこれまで以上に求められると感じた。
また、招待講演では、「現場で培った経験は現場の外でも新たな価値を持つ」という視点を得た。リスクを判断する力や関係者との合意形成を進める力、限られた条件の中で優先順位を決める力など、日々の業務を通して培ってきた経験は、品質保証という枠を越えて活かせる可能性があることに気付いた。
一方で現在の私は、成果物を完成させることに意識が向きすぎ、その活動が顧客満足や事業価値にどのようにつながるのかを十分に考えられていなかった。今後はAIなどの技術を活用して作業時間を短縮し、その分、人だからこそ担える判断や改善、関係者との対話により多くの時間を使っていきたい。
最後に、北海道で目にしたキャッチフレーズ「その先の、道へ。北海道」が強く印象に残った。
その言葉を目にしたとき、自分もこれまでの業務範囲の先へ踏み出せるだろうか、と自然に考えていた。
今回のJaSST'26 Hokkaidoで得た学びと、これまで培ってきた経験、そしてこれからの出会いを力に、ユーザーへ価値を届けるための「その先の道」を歩んでいきたい。そんな期待と少しの不安を抱きながら、自らのこれからを前向きに考えるきっかけとなったシンポジウムであった。
記:京 英未