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2026年3月20日(金) 現地開催 + オンライン開催
イベントは現地(東京ビッグサイト)およびオンライン(Discord)で開催された。Discordでは、雑談チャンネルなどで開始前から賑わいを見せていた。オープニングでは片山氏より、実行委員やスポンサー企業への感謝、そして念願のビッグサイトで開催できたことへの思いが語られた。
AIの急速な普及により「2030年までに仕事がなくなるのでは」と不安視する声があるが、結論として仕事そのものが消えるというより"役割が変わる"と述べた。テスト領域では、AIの採用によってテスト設計・実装・実行・結果整理などの一部は効率化され、現時点でも業務の約10%は置き換え可能になりつつある。一方で、要求やリスクの文脈を読み解いて適切な観点を選ぶこと、成果物の妥当性をレビューすること、責任を持って意思決定することは人間の役割として残る。
また、ハルシネーションや偏り、説明責任といった落とし穴を踏まえ、AIを"チームメンバー"として迎えるにはガードレール設計と人間の介在が不可欠だと強調した。
「AIをテストチームに採用する」メリットを感じると共に問題点(落とし穴)は依然として大きいと感じた。AIはある領域で人間よりも一定の優れた成果を出すことは間違いなく今後もその領域を増やすだろう。さらにその進化するスピードは、数ヶ月という短期間になる可能性もあるだろう。現在のテスト業務において、人間の業務は急速に減っていくことは想像に難くない。
しかし、Gayathri氏の主張するように、ハルシネーションや倫理・社会性の獲得の難しさは、AIを使う上で大きな問題である。そのレビューを行う事の重要性は残り、人間の役割や責任は大きい。そのため、今後はAIに任せる部分と人間が責任を持つべき部分を見極めながら活用していくことが重要であり、QAエンジニアとしての役割は形を変えながらも、引き続き重要であり続けると感じた。
PlaywrightでE2Eテストを継続運用してきた事例を基に、生成AI(Claude Code)を開発・QAプロセスに組み込んだ取り組みを紹介した。具体的には、テストケースのたたき台作成、既存テストの改修案提示、失敗時の原因切り分け補助、タスクチケットの作成など、周辺作業をAIに委ねることで人の手戻りを減らした。
また、AIに任せる範囲を明確にし、レビュー観点や出力品質のチェック項目を整備することで、安全に効率化を進めるアプローチを示した。
テスト自動化を進める中で、どの部分をAIに置き換える事が出来るのかを理論立てて説明されていてわかりやすかった。
講演内では属人化しやすいテスト分析やタスクチケットの作成をClaude Codeに置き換えることで、おおよそ7~8割のコスト削減を行えたとのことで生成AIの活用によるプロジェクトの貢献度の高さに驚いた。さらに、それだけに留まらずプルリクエストなどにおいてもClaude Codeに置き換えさらなる効率化を行う取り組みを行っているとの事であった。私はここまで話を聞き、生成AIを活用したプロジェクトでは、テスト仕様書の作成やレビューといったタスクの重要性が今以上に大きくなり、より高度化していくと考えた。
テスト自動化の定義(広義/狭義)から入り、導入前に整理すべき目的・スコープ・期待効果を解説した。ツール選定では、対象アプリの特性やチームのスキル、メンテナンス性を軸に比較する重要性を紹介した。さらに、導入後に失敗しやすいポイント(メンテ工数の見積もり不足、運用体制不在など)を挙げ、継続運用の仕組み作りが成果を左右すると述べた。
最後に、生成AIの活用も視野に入れつつ、まずは今日から始められる小さな自動化の一歩を提案した。
「テスト自動化」と一言で言えど、何らかのテスト活動を自動化する広義的なものから、テスト実行だけ自動化する狭義的なものまである。その中でも、テスト自動化の理解が乏しい人間ほどテスト自動化を「銀の弾丸」と思い込む事も多い。銀の弾丸となっている時には、自動化の目的があやふやになりがちであると述べ、それによって"品質向上という本来の目的から逸れてしまう"という点については、思わず首が千切れんばかりの同意の頷きをしてしまった。
さらに、自動化の失敗の原因のひとつとして「運用」の軽視である点については、会場内でも首振り人形が増殖していた。短い講演の中で、自動化の基礎からツール選定方法、失敗原因などの様々な視点で考え直す事が出来た。自動化初心者だけでなく既に自動化を行っている人物でも、初心に帰りテスト自動化について考える事が出来る価値のあるものだと感じた。
AIの進化によりQA業務は大きく変化しており、テストケース生成、テストコード作成補助、ログ解析などは自動化が進んでいると整理した。一方で、人命やUXに関わる判断、プロダクトの価値やリスク許容度を踏まえた意思決定、ドメイン知識の適用は依然として人が担う必要があると指摘した。
また、AIとの協働を前提に、品質基準の設計、プロンプトやガードレールの整備、AIの出力を評価・監督する力がQAエンジニアの新しいコアスキルになると語った。
今回の講演を通して、AIがQA業務に与える影響の大きさを改めて実感した。特にテストケース生成やコーディング支援の領域では、すでにAIを前提とした開発スタイルに移行しつつあり、現在は人とAIが協働する「ケンタウロス状態」にあると理解した。
また、講演中のDiscordチャットも活発であり、業界全体でのAIにおける仕事の喪失に対しての関心の高さを強く感じた。一方で、テクバンの豊田氏の話より自動運転の事例のように人命やドメイン知識が関わる領域では、AIだけに任せられない現実もあり、人の役割は依然として重要である。今後は単純作業に依存せず、AIを活用しながら品質基準の設計や判断力といった付加価値を高めることが重要であると考える。
また、余談ではあるが自身も航海士などの経験を経て現在はQAエンジニアとして働く身である。そのため、より色々な経験を持った安野さんに憧れもあり、近くでこのような講演を聴けることが出来大変嬉しく思うと共に、自身のスキルセットについて深く考え見直す必要があると感じた。
AIやロボットの進化により、単なる機能の正しさだけでなく「人間らしさ」や信頼性が品質の重要な要素になっていると述べた。石黒氏のアンドロイド/ロボット開発の経験を例に、外見や振る舞いが与える印象、受容される距離感、違和感(いわゆる"不気味の谷")など、評価すべき品質特性が多面的であることを示した。そのため品質保証は、従来の機能評価に加え、倫理や社会的文脈、利用者の心理を踏まえた判断が求められる領域へ拡張している。
今後エンジニアは、人間理解や価値判断を含めたより高度な役割を担うことが期待されていると締めくくった。
今回の講演を通して、QA業務が単なる品質確認ではなく、人間や社会を理解する領域へ拡張していることを強く実感した。特にロボットやAIにおける「人間らしさ」や倫理が品質に直結するという視点は非常に興味深く、私たちQAエンジニアとして見過ごせない課題であると考えた。
また、現在はAIの急成長により、QAエンジニアの役割も変化の過渡期にあると感じた。さらに講演中のDiscordチャットも活発であり、SF漫画やアニメ・映画などに例えて「ついにこの時代が来た!?」など、ユーモアとして捉える投稿も見られた。逆に「人権」や「倫理」など人生そのものを考える哲学的な投稿も増えこのテーマへの関心の高さ・難しさを実感した。
一方で、品質の定義が社会や文化に依存するという点は難易度が高く、今後のAIに対する品質は技術だけでなく倫理や文脈理解を含めた総合的な判断力が求められると考える。
ソフトウェアの品質向上に寄与する学術的な論文に対してASTERが選出する「善吾賞」の表彰があり、「JavaScriptライブラリのテストコード変更に基づく後方互換性を損失するバージョン検出」の論文の著者である伊原氏、前川氏、松田氏が受賞された。
表彰後、実行委員長の佐藤氏からは、「コロナによりできなかったJaSST'20Tokyoをやり直そう!」という気持ちで開催したと語られた。
一方で、これまでの2日間開催に対して単日開催となったため、セッションの重なりなど課題もあったが、やってよかったとも述べられた。ただ、実行委員としては箱を用意しただけでその中身を埋めて頂いたのは参加していただいた皆様であり、参加者やスポンサー企業、協力頂いた皆様にとても感謝しているとの強い思いを語った。
今回のJaSST'26 Tokyoは、生成AIをテーマとするセッションが多く、関西で自動化に携わる私にとって自身のキャリアを見つめ直す貴重な機会となった。さらに当日は同じビッグサイトで春コミも開催されており、ソフトウェアエンジニアとクリエイターたちが同じ海域にひしめき、独特の熱気を帯びていた。
私は元航海士でもあるのだが、だからこそこのJaSST'26 Tokyoで得られた視点がある。それは、荒天の中で針路を定め続けた経験が、いまAIと共に働く激流の時代でも活きるのだと実感し前向きになることが出来た。とはいえ、羅針盤と海図を頼りにしていた時とは違う困難も存在するだろう。AIという"高精度な自動操縦システム"が登場し、「自分は見張り役になるのか?」などと若干の職業的アイデンティティの揺らぎも感じている。その中で、まだまだ短いQAエンジニアとしての4年間を振り返りつつ、AIと共に働く未来に向けてスキルをどう磨くべきか深く考えさせられた。
また、イベントを成功に導いた実行委員や講演者の皆様の情熱と準備の大きさを随所で感じ、こうした学びの場を提供していただいたことへの感謝が強く残る一日であった。総括して、関西の港町から出てきた一人の技術者としては、JaSST'26 Tokyo、ひいては品質という大海原の広さと熱量に完全に圧倒された。しかし、それ以上に「またこの海に出たい」と思える充実した航海であったと言える。
記:幸山和史(testingOsaka)