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イベント報告
ソフトウェアテストシンポジウム オンライン Edelweiss

2023年1月28日(土) 於 オンライン開催

ソフトウェアテストシンポジウム オンライン Edelweiss

はじめに

当イベントは Zoomによるオンライン開催である。また、Discordを利用して参加者が交流を図りながら理解を深めていく構成であった。

13時、実行委員長の星野氏より、「ゆるゆると始めていきます」と和やかな雰囲気で始まった。冒頭、星野氏は、昨年娘が生まれ育休を取得したことを話し、イベント準備について他委員への感謝を述べた。今年度のテーマが「テスト技術者のキャリアの積み方」であること、参加者が身近に考えられるようなスピーカーを選出したことを説明した。

また星野氏は、今回参加にあたり、参加者には「何を持ちかえりたいか」の目標を設定してご覧いただきたい旨を述べた。本日最後に行うふりかえりのワークを画面に表示し、今回のイベントにより達成できることのイメージを示して、オープニングを締めくくった。

ライトニングトーク(セッション)

「品質/ソフトウェアテスト技術者のキャリアの積み方」のテーマに沿って、スピーカー3名から自己紹介を含めて発表があった。

「テストマスターへの道」
 とのの氏
セッション概要

とのの氏はテスト歴7年。経歴年表を表示し、テスト技術者としての経歴を説明した。テスト技術者として試行錯誤する中での"悩み"が勉強する動機であったと話した。勉強会に参加して、勉強会では正解は教えてもらえないこと、知識を業務に活かしていくための練習をする場であると気づいた、と語った。勉強会での学びを経て、ますます「テスト・QAは楽しい!」「もっとうまくなりたい!」と感じた、と思いを話した。

筆者感想

筆者も、目の前の悩みの解決が勉強の動機であるため、共感が持てた。オープニングで星野氏が「参加者が身近に感じられるようなスピーカーを選出した」と述べた理由がすぐに分かった。とのの氏に、知識を持ち帰り業務へ繋げた方法を聞きたい、と思ったところ、Sli.doに同様の質問が記入されていた。この話題でこの後掘り下げられるのだ、と期待するとともに、当イベントの意義を強く感じた。

「『一通りできるようになった』その先の話」
 ひとみ氏(サイボウズ)
セッション概要

ひとみ氏はテスト歴7年。未経験からQAエンジニアに転職し、3年目ごろから「一通りできるようになったが、これから何を強みとして伸ばせばいいのか」と悩んだと話す。自分と対話し、「実装観点で不具合を防ぐ」「ビジネス観点で価値を高める」の2点の観点に行き着き、それらができるようになるためにやったことを語った。

  1. 実装観点で不具合を防ぐ
    1. 実装前に調査し伝え、実装前に観点を増やしてもらう
    2. 過剰なテストを行わなくてよいよう優先度の高い不具合は何かをとらえる
    3. 適切に自動化を進める
  2. ビジネス観点で価値を高める
    1. 製品の価値を理解する
    2. ビジネスを理解する
    3. ユーザーの解像度を上げる(ユーザーを具体的にイメージする)

まだまだ先は長く、日々悩んでいるが、担当製品が好きで価値を届けたい、チームが好きだからもっと成長したい、と語って締めくくった。

筆者感想

業務知識、ドメイン知識が重要だと分かってはいるが、どのように学べばと悩んでいるテスト技術者は多いのではないだろうか。紹介された観点は非常に実践的であると感じた。製品がどんな流れで顧客に届くかを知ることで製品の立ち位置や価値が見えてくる、に強く同意できた。

「立ち止まっても、寄り道しても」
 かとあず(家登あずさ)氏(弥生)
セッション概要

かとあず氏はテスト歴15年。テストを始めてから10年間は、何をしていいか分からず立ち止まっていた、と話す。11年目、Twitterでの情報共有やWACATEに参加するなどの活動を始める。その後コロナで勉強会は減ったが、2年ほど経ち再開。自社の勉強会運営やマネジメントにも活動を拡げた。そして15年目、自分が10年立ち止まってしまった経験を生かして、これから誰かが走り始めるきっかけを作りたい、と語った。走って行ってみないと先に何があるか分からない。みんなで一緒に走り始めないか、と参加者に呼び掛けた。

筆者感想

勉強会イベントが遠い世界に思えて参加しづらい、という気持ちはよく分かる。多くのテスト技術者が、最初の一歩をどうやって踏み出せばいいか迷っている。立ち止まったことがある先輩が寄り添って引っ張りあげてくれるなら、なんと心強いことだろう。私も協力したい、と思った。

パネルディスカッション

セッション概要

Sli.doを表示し、実行委員とろ氏のモデレートのもと、3人のパネリストが参加者からの質問に回答した。ここでは興味深かった2件の質問を取り上げて概要を紹介する。

質問「若手に勉強会や資格取得に意欲的になってもらうコツは?」

  • 先輩たちが、やってきたこと(資格取得や勉強会参加)を共有してくれて興味を持った。先に参加してくれた人の話が聞けると、イメージができてハードルが下がる。
    (ひとみ氏)
  • 「勉強会」だとハードルが高くて勉強するかどうか迷っている人には響かなかった。カジュアルに「わいわい動かす会」みたいな位置づけで始めて馴染ませた。
    (とのの氏)
  • 先輩として楽しそうな雰囲気を醸す。いかに参加して楽しかったかを話す。
    (かとあず氏)

質問「勉強会の内容を生かすためにどんな工夫をしているか」

  • 活用するために、「勉強会で何を持ち帰りたいか」をイメージしてから参加する。今自分の業務で何がモヤモヤしていて、何を解決したいのかを考えておくと、そこにフィットすることが見つかることがある。
    (とのの氏)
  • 勉強会に参加して、今すぐ活用できないと思っても、いつか生かせそうなことはストックしておく。機会が来た時に取り出して渡したら喜ばれたことがある。
    (ひとみ氏)
  • 自分の悩み事以外も事前に拾っておく。社内の日報を全部見て、チームの課題を把握しておく。その課題のヒントになることはないかを勉強で探る。
    (かとあず氏)
筆者感想

素晴らしく効果的かつ実践的な内容が語られていると感じた。自分の課題だけでなく、チームの課題も拾って解決するために勉強する。今生かせなくてもストックする。それができれは、自分の学びの活動がチーム全体の改善に繋がる。チームの改善に繋がれば、きっと学びに関心を持ってくれる人も出るだろう。自分にとって、2つの問題の解決策が見つかった、最高のパネルディスカッションだった。

Ask the Speaker&グループトーク

Discordで、テーマが設定されたチャンネルに分かれてグループトークを行った。
筆者は、「若手育成の悩みを話そう」「知識から実践へ繋げる方法」「育成のために自分は何を勉強すべきか」というテーマの3つのグループトークに参加。他の参加者が話す、勉強会開催事例の話や、お勧めの書籍を聞いた。

筆者感想

皆悩みは同じだな、という共感とともに、自分の1歩2歩先を歩いている先輩の実践例や失敗例が、非常に参考になった。勉強したことを実践に生かせていない、という悩みを持つ参加者には、勉強会後のこの「誰かと一緒に実践に落とし込む」時間が必要だと実感した。

ふりかえりワーク

Discordで4人のチームに分かれてワークを実施した。用意されたふりかえりワークシートに、目標と目標を達成するための具体的なアクションプランを書き入れた。その後、4人で共有し、お互い感想を述べ、「明日からできること」に落とし込んだ。

筆者感想

立場は様々であったが、それぞれの観点から積極的に意見を述べ、とても有意義な意見交換ができた。目的、障害(現状の問題点)、達成したい状態、具体的なアクション、と使いやすいフレームワークであったため、ワークが初めての参加者も取り組みやすかったのではないだろうか。

クロージング

実行委員長より、実行委員と参加者への御礼が述べられた。JaSST Onlineの達成成果は参加者次第である、積極的な参加や協力に感謝する、と話した。
今回のタイトルであるエーデルワイスの花言葉は「大切な思い出・勇気」。勇気を持って参加してくれたことを、大切な思い出にしてほしい、と締めくくった。

筆者感想(全体)

Zoom、Sli.do、Discord、Spreadsheets、と4つもののツールを使ってのイベントであったが、実行委員の方々の念入りな準備と分かりやすい説明により、終始スムーズに開催されていた。
受講前は、キャリアアップや転職などの話が取り上げられると思っていたが、もっと等身大で誰もがすぐに生かせる内容であった。「どのように学ぶか」「どのスキルを伸ばせばよいか」と、技術者が直面する悩みに対し、少し先の先輩が実体験を語ることで解決策の解像度を上げるという非常にいい内容であった。自分の書いたふりかえりシートを見ながら、これからの具体的なアクションを計画することにした。

記:岩崎 るみ子

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